スタートの段階指導

第1段階 コーチの補助の元、しゃがんでスタート

【指導者の補助を受けて⽔⾯と同じ⾼さからのスタート】

泳者が過去に⽔⾯に対し強い衝撃を受け恐怖⼼を抱いている場合や未体験の場合など、泳者に恐怖⼼を抱かせることのないよう、⾶び込むという意識を持たせず、ゆっくり⽔⾯を滑る感覚を持たせることに留意してスタートの補助をします。
スタート時の⾶び出し⾓度は構え姿勢の腰の位置が⾼いほど⾼く上がり、その結果、⼤きな⾓度で⼊⽔する傾向になるため、腰を⼗分に下げる(しゃがむ)ことが重要なポイントとなります。

ステップ解説

  1. 1. 泳者は、⾜の内側を平⾏にして⽴ち、両腕(上腕)を⽿の後ろにし、両⼿を重ねる。

    2. 指導者は、親指と⼈差し指で⽚⽅の⼿⾸を持ち、⼈差指と中指の間でもう⼀⽅の⼿⾸をつかむ。

    ※ 指導者のもう⼀⽅の⼿で腹部(または膝)を⽀えると、速度を⾃由にコントロールすることができる。

  2. 3. 泳者は、膝を深く曲げ(しゃがみ込み)、膝と胸をできるかぎり近づける。
    指導者は、泳者の背中が⽔⾯と並⾏に近くなっていることを確認する。

  3. 4. 指導者は、できるだけゆっくり泳者の体重を⽔⾯⽅向へ移動させる。

    ※ ゆっくりとした動作は重要であるが、動作を⽌めることは泳者に恐怖⼼を抱かせることになるので、体重移動からの動き出し以降、動作は⼀連でなければならない。

  4. 5. 指導者は、体重をつま先に移動させ、⽔⾯と並⾏になるように体を伸ばしながら着⽔させる。

    ※ ⼿⾸と腹部(または膝)を⽀え、できるだけゆっくり着⽔させる。
    ⼊⽔時に衝撃が発⽣しないよう、速度コントロールに留意する。

  5. 6. 指導者は、着⽔と同時に指先を⽔⾯⽅向に向け、浮上させる。
    泳者は⾃然に加速するが、⼿⾸をつかんだまま泳者の速度に合わせる。

  6. 7. ストリームラインを保ったまま、浮上する。
    指導者は、⼿⾸を⽔⾯に維持したまま⾃然に発⽣する加速を妨げないよう、泳者と共に移動する。

第2段階 オーバーフローから、しゃがんでスタート

【両腕を耳の後ろに組み水面からスタート】

第2段階から、泳者は指導者の補助は得ずに一人で行います。
腰を十分に下げる姿勢など要領はおおむね第1段階と同様ですが、水面に対して背中と上腕の角度を水平に構えることが着水後の深度を浅く保つポイントとなる点に留意してください。

ステップ解説

  1. 1. 泳者は、足の内側を平行にして立つ。

    2. 両手を重ね、両腕(上腕)を耳の後ろにする。

    3. 膝を深く曲げ(しゃがみ込み)、膝と胸を近づける。

  2. 4. 上腕全体と背中が、水面と並行であることを意識する。

  3. 5. 体重をつま先に移動させ、体全体が水面と並行になるように体を伸ばしながら壁を蹴る。

  4. 6. できるかぎり水平に近く、小さな角度で入水する。

  5. 7. 着水と同時に指先を水面方向に向け、手のひらで深度を調節する。

  6. 8. ストリームラインを保ったまま、浮上する。

第3段階 オーバーフローから、両手を下に置き両腕を耳の後ろにしてからスタート

【両手を両足の外に置き水面からスタート】

第3段階のスタートは構えから飛び出しまでの時間を要す動作になりますが、小さな入水角度を作る重要な段階です。
第2段階と同様に上腕および上体が水面と並行に近くなること、蹴り出しで腰が上がることのないように留意してください。

ステップ解説

  1. 1. しゃがみ込むよう膝を十分に曲げ、両手を両足の外側に置く。

  2. 2. 膝の曲げ角度、上体の前傾を保ったまま両腕を水面と並行になるまで上げ、手のひらを重ね、上腕で耳を挟みこむ。

  3. 3. 指先を高く保ったまま体重を移動させて、腰の高さが変わらないように壁を蹴る。

  4. 4. 体重をつま先に移動させ、体全体が水面と並行になるように体を伸ばしながら壁を蹴る。

  5. 5. 着水と同時に指先を水面方向に向け、深度を調節する。

  6. 6. ストリームラインを保ったまま、浮上する。

第4段階 オーバーフローから、グラブスタート

【水面からグラブスタート】

第4段階から、蹴り出しと腕の振り上げを同時に行います。
動作が一連となっても、構えから前腕の着水まで腰の高さを変えないこと(上方向に上がらないこと)に留意してください。

ステップ解説

  1. 1. 十分に膝を曲げながら前傾し、両手を両足の外側に置く。

  2. 2. 蹴り出しと同時に手を振り上げる。

  3. 3. 壁を蹴り出しながら、両腕を頭上を越え水面と並行になるまで上げ、手のひらを重ね、上腕で耳を挟みこむ。

  4. 4. 指先を高く保ったまま、腰の高さが変わらないよう空中姿勢をとる。

  5. 5. 着水と同時に指先を水面方向に向け、深度を調節する。

  6. 6. ストリームラインを保ったまま、浮上する。

第5段階 スタート台から、グラブスタート

【スタート台からグラブスタート】

スタート台に上がった恐怖心から蹴り出しが弱くなることがありますが、弱い蹴り出しであっても、入水角度によっては一気にプール床面に達することがあるので注意が必要です。
膝を十分に曲げて目の位置をスタート台の角に近づけることにより、恐怖心を和らげることができます。

ステップ解説

  1. 1. 両足の内側を平行にし、スタート台に足を置き、第一指に十分力が入るよう足をスタート台にかける。

    2. 十分に膝を曲げ前傾しながら、両足の外側のスタート台をつかむ。

  2. 3. 蹴り出しと同時に手を振り上げる。

  3. 4. 壁を蹴り出しながら、両腕を頭上を越え水面と並行になるまで上げ、手のひらを重ね、上腕で耳を挟みこむ。

  4. 5. 指先を高く保ったまま、腰の高さが変わらないよう空中姿勢をとる。

    6. 両腕と両足を強く絞る。

  5. 7. 着水と同時に指先を水面方向に向け、深度を調節する。

  6. 8. ストリームラインを保ったまま、浮上する。

第6段階 スタート台から、ヘッドアクションを使いグラブスタート

【スタート台からヘッドアクションを使ってグラブスタート】

第6段階では、出発の合図と同時に多くの動作を連動させます。
競技者レベルのスタート方法となるため、第5段階までを十分体得した上で行わせてください。

ステップ解説

  1. 1. 両足の内側を平行にし、スタート台に足を置き、第一指に十分力が入るよう足をスタート台にかける。

    2. 首をリラックスさせ、十分に膝を曲げ、前傾しながら両足の外側のスタート台をつかむ。

  2. 3. 出発の合図と同時に頭を振り起こしながら前腕を振り上げ、壁を蹴り出す。

  3. 4. 膝を伸ばしながら、顎を引いていく。

  4. 5. 膝が伸びるタイミングで顎を十分に引き、手のひらを重ね、上腕で耳を挟みこむ。

    6. 指先を高く保ったまま、腰の高さが変わらないよう空中姿勢をとる。

  5. 7. 着水と同時に指先を水面方向に向け、深度を調節する。

  6. 8. ストリームラインを保ったまま、浮上する。