水泳競技の一種、飛込競技は1904年の近代オリンピック発祥のころから正式競技として採用され、1928年には現在に近いような競技形態が整いました。このように歴史のある競技ではありますが、どのように競技会が行われるかご存じない方のために現在の競技方法を簡単に解説いたします。
◇競技種目
次のような競技種目が男子、女子それぞれにあります。
・高飛込
高さ5m、7.5m、10mの固定された台から演技が行われます。選手にとって高さを克服することが重要な課題となる競技種目です。日本選手権では高さが10mに限定されています。
・飛板飛込
1m、又は3mの高さに設置された弾力のある板を使用して演技が行われます。その材質はジュラルミンの軽合金が使用され、かなりの反発力が得られるようになっています。この力を有効に利用出来るかどうかがこの競技種目の大きなポイントになります。
・シンクロナイズドダイビング
1998年オーストラリア・パースで開催された世界選手権で採用され、オリンピックでは2000年オーストラリア・シドニーから実施された競技種目です。2名1組の選手が同時に演技を行い、その演技の完成度と2名の同調性(シンクロナイズゼーション)により順位を競います。得点の占める割合は演技が40%、同調性60%ですので良い演技をしても2名のタイミングが合ってなければ高い得点を得ることが出来ません。いかに2人の息を合わせるかが、この競技では重要になります。男女ともに3m飛板飛込と10m高飛込の2つの競技種目があります。
◇演技種目について
演技は「群」と呼ばれる次の6種類に分類されます。
第1群 |
前飛込 |
: 飛込台から前に向いて、前方に回転する。 |
第2群 |
後飛込 |
: 飛込台から後に向いて、後方に回転する。 |
第3群 |
前逆飛込 |
: 飛込台から前に向いて、後方に回転する。 |
第4群 |
後踏切前飛込 |
: 飛込台から後に向いて、前方に回転する。 |
第5群 |
捻り飛込 |
: 第1群〜第4群に捻りを加える。 |
第6群 |
逆立ち飛込 |
: 飛込台の上で逆立ちをしてから演技を行う。(高飛込競技種目だけで演じられます) |
演技中に選択する「型」は次の4種類があります。
伸型 |
: |
腰や膝を曲げずに両足を揃え、爪先を伸ばした型。 |
蝦型 |
: |
身体を腰で折り、膝を曲げず、両足を揃え、爪先を伸ばした型。 |
抱型 |
: |
小さく腰と膝を曲げ、下肢を両手で抱え、爪先を伸ばした型。 |
自由形 |
: |
伸型、蝦型、抱型のいずれの型を組み合わせても良く、捻りを伴う1回ならびに1回半の演技で適用されます。 |
以上の群、回転する回数、捻る回数、型によりそれぞれに固有のコードナンバー「演技種目番号」が設定されます。それらには一定の計算式で導かれた「難易率」と呼ばれる難しさの割合を示す係数が付けられます。ちなみに現在、競技会で実行されている演技の中で最高の「難易率」は3.9です。
◇演技構成について
競技会は基本的に次のような演技構成で行われます。
・男子の部 自由選択飛6演技
・女子の部 自由選択飛5演技
・シンクロの部 制限選択飛2演技+自由選択飛3演技 計5演技
(制限選択飛はどんな演技を行っても難易率2.0で計算されます)
◇得点について
採点は5名、もしくは7名の審判員によって行われます。審判員は演技の難しさには左右されず、演技の完成度に合わせて0.5刻みで0点から10点までの採点をします。その採点をもとに次のような計算方法で得点を算出し、すべての演技の得点合計により順位が決定されます。
・個人競技の場合(審判員7名)
高い採点を出した2名と低い採点の2名を削除、残り3名の採点の合計に「難易率」を掛けものが得点となります
・シンクロ競技の場合
採点は4名の演技審判員(エクスキューション)と5名の同調審判員(シンクロナイズゼーション)の合計9名の審判員により行われます。演技、同調それぞれから高い採点の1名と低い採点の1名を削除、残り5名の採点の平均を3倍し「難易率」を掛けものが得点となります
◇競技会の観戦
競技会のプログラムの中に各演技の得点を記入する欄があります。そこにアナウンサーが演技ごとに発表する得点を書き入れながら競技会を観戦すると、今 現在のトップの選手が誰なのか、またラウンドごとの順位の入替わりも良く解り、競技会がより一層興味深いものになると思います。自分も審判員になったつもりで選手に採点し、それを本当の審判員と比べてみるのもまた面白い観戦方法だと思います。もっと詳しくお知りになりたい方は(公財)日本水泳連盟飛込競技規則をご覧下さい。
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