【月刊水泳1月号】男子水球World Cup Division2優勝! Division1 昇格
執筆・寄稿:水球女子日本代表監督 筈井翔太
水球女子日本代表チームは、2023年アジア大会で中国に敗退してパリ五輪出場を果たすことができなかった。国際大会に参加するのはアジア大会ぶりである。ワールドカップはディビジョン1と2に分かれており、ディビジョン2からは上位2チームがファイナルに進出できることとなっていたため、目標を「ファイナル進出」として大会に臨んだ。また、新ルールを試用・採用する初めての大会となった。
10月に新監督に就任したが、海外に所属している選手やそれぞれの所用によりチーム全員の集合は今大会が初めてとなった。女子日本代表は「ロサンゼルス五輪出場」をビジョンとして掲げている。そして目指したい水球の認識を統一させるためには、それぞれのコミュニケーションを常に意識する必要があり、グループワークや個人面談など様々な取組みにてコミュニケーションを図った。戦術としては、日本水球の代名詞であるパスラインディフェンスからカウンターアタック、そしてアーリーオフェンスからの積極的な攻撃を突き詰めていくこととした。
能力が高い選手は多いが、自身の実力を認識できていない選手や自信を持っていない選手も多く、今後に繋がる大会にしたいと考えた。
予選リーグ初戦は南アフリカ戦で余裕を持ってプレーできた。予選リーグ2戦目は、ライバルである中国との対戦。前半は日本の悪い部分・課題が浮き彫りとなり、流れも悪く点差をつけられた。後半は日本の強みを出せて、中国相手でも通用する部分を認識できた試合となった。結果的には敗退となったが、試合後の表情は悔しい感情はもちろんあったものの、後半にかけて日本の目指す水球を発揮することができたため、ポジティブな感情を持っている選手も多くいたのは印象的である。決勝トーナメントでは、クロアチア、イギリス、などヨーロッパでベスト8に入るレベルのチームと対戦した。クロアチア戦は、ヨーロッパ水球の王道である大型センターフォワード中心の攻撃と、ゴール前を守るゾーンディフェンスの戦術をいかに打破できるかという戦いとなった。結果的には、18失点をしたものの、26得点を挙げた。続く準決勝のイギリス戦は、徹底した日本対策でカウンターアタックを封じるための少数攻撃を仕掛けてきた。また、今大会から採用されたチャレンジシステムやVAR判定で試合が幾度も中断となり、集中力を保つことがとても難しい試合となった。最終的には日本の良さを発揮し、大会の目標を達成することができた。そして、決勝はリベンジとなる中国戦。試合の序盤は敗退した初戦と同様に6連続失点をしてしまう。しかし、3ピリオドには日本の武器であるカウンターアタックからの連続得点を重ね、一気に逆転をすることができた。そのまま試合終了となり、ディビジョン2優勝、ファイナル進出、ディビジョン1昇格を果たした。
今大会を通して日本チームはとても良い雰囲気で大会を終えた。また参加チームの中で最多得点を挙げることができた。そして、若手で初A代表の小林真穂、福田星香が活躍することもできた。これらは私たちの目指す水球を結果として示すことができたと考える。ただ、目標を達成することはできたが、カウンターアタック・アーリーオフェンスについては、今後欧米強豪国と戦っていくために突き詰めていきたい課題も見えた。今大会の結果に満足することなく、今回見つけることができた課題を解決することと、選手個々人のパフォーマンスを向上させていきながら、2028年に向けて精進していきたい。結果を出すことができたことは選手の自信を得るきっかけになり、集合写真の笑顔を見ても分かる通り幸先の良いスタートを切ることができた。
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月刊水泳 vol.582 2025年1月号掲載