2025.03.10

【月刊水泳1月号】OWS ナショナルチーム合宿報告

執筆・寄稿:OWSヘッドコーチ 太田 伸

 パリ五輪が終わり、ロサンゼルス五輪に向けた新たなOWSナショナルチームが発足した。そのうち半数が競泳のインターナショナル標準記録を突破していることもあり、今回は初めて、競泳インターナショナル合宿と合同開催がなされた。これも一つ、海外の水泳長距離選手の流れに近づけたと考える。

 海外のOWSトップ選手やOWSトップコーチは競泳でも各国の代表となっており、デュアルスイマー・デュアルコーチとして活躍している。日本でも、昔は「海で泳ぐと泳ぎが崩れる、感覚がずれる」と言い、競泳とOWSの二刀流から逃げてきた節がある。現在では、OWSを競泳の強化に取り入れるのが1つの強化方法となっており、ヨーロッパが強いのもその動きをいち早く取り入れたからであると考える。その点で遅れをとったアメリカもケイティグライムス、クレアウイエンスタインなどは高校生でありながら競泳とOWSの両方で活躍している。今年、日本の女子800mランキングにおいて、日本歴史上初、8分20秒台(8分30秒を切っている選手が4人出た。ランキング8位以内の半数はOWS経験者である。徐々にではあるが日本も変わってきたと考えられる。

 今回は、競泳のインターを突破していない選手は12/2 〜 10、インター突破者は12/2 〜 22まで長野県東御市で合宿が行われた。

 3日程度、順応期間を設け、その後は1回の練習で1万mを超える練習を実施した。OWS選手のため、連続泳のメニューが多くなると、100mごとに区切るインターバルトレーニングとは異なり、選手の疲労度も高く、メニューを作るのにも苦慮した。

 朝のトレーニングは競泳と同じ動きをして、週3回程度自転車トレーニングも行った。インターを切っている選手は21日間と長期間だったが、インターを切っていないOWS選手は9日間と通常の合宿期間だったため、のんびり強化をして世界に追いつけるとは思えなかったため、少し詰め込みすぎた感があったが、濃い合宿を実行した。世界との差を感じているのはコーチだけではなく、2024年度においてW杯や世界ジュニア選手権で世界の壁を感じた選手が参加していたことも良かったと感じる。選手自身が必要性を理解し、合宿に臨んでいた。とはいえ、きつい練習であることには間違いなく、集中したトレーニング、心を折られるようなトレーニングを繰り返しながら、次のシーズンでの飛躍を思いながら練習し、緊張感のある合宿となった。

 総トレーニング距離は12月3 〜 9日で106,720m、12月3 〜 22日で281,600mとなった。OWSも決して距離をこなせばいいわけではない。しかし、OWSはレースが10kmで競技時間はおよそ2時間であり、2時間泳ぎ続ける能力が必要であることを考えると必然的な練習量となってくる。今の日本は10kmレースの7割が過ぎたあたりで離されてしまう。しかも離され方が、他国の選手はそこからさらにピッチが上がるという純粋な体力タンクの違いを感じ、そこを強化する練習を行った。今回の合宿では全てのメニューと練習結果を選手輩出コーチと共有した。

 OWSはまだまだ試行錯誤しながら強化していかなければならず、今後もOWS強化スタッフはじめ、コーチ陣で意見を出し合いながら強化をしていきたいと考える。

 そのような中、競泳のパリ五輪メダリストが隣で泳いでいる環境は、OWSメンバーにとってもプラスになったと考える。日本人選手で五輪でメダルが取れているという事実を生かし、今後も種目問わず、水泳チーム、強化していければ、相乗効果が生まれるのではないかと考える。いつかOWSからも五輪メダリストを生みたいと思うが、まずは2016年リオデジャネイロ五輪以降途絶えている「五輪入賞」を目指し、ロサンゼルス五輪まで邁進していきたいと考える。

月刊水泳 vol.582 2025年1月号掲載