2025.03.10

【月刊水泳1月号】飛込 World Aquatics ジュニア飛込選手権 リオデジャネイロ 2024 報告

執筆・寄稿:国際ジャッジ 茶木康寛(大分県立別府翔青高校)

【チームリーダーズミーティング(TLM)及びジャッジミーティング JM 】
・同時進行なし
・外のプールのため、日没の関係で予選は45秒、決勝とシンクロは50秒サイクルで進行
・ドーピング検査あり
・最終日は隣接のマラカナンスタジアム(オリンピックの開閉会式会場)で地元サッカーの試合があり、競技時間の変更や騒音でホイッスルが聞こえない可能性あり
・チーム全体の連絡はAQUAのアプリ、ジャッジの連絡は WhatsAppアプリで更新する
・天候や気温を懸念し、予選は2~3本ごとにパネルを交代(制限選択、自由選択関係なく)
・「国の帽子を脱ぎなさい」(公平にジャッジをしなさい)
あなたたちはコーチではなくジャッジとしてこの場に来た

【1日目】
※予め振り分けられた6グループ
(1グループ6~7人)で自己紹介。今後はこのグループでディスカッションを行うこ
との説明
1 まずは体調を万全に!
2 パネルがワンチームである
3 TDCの説明を聞くだけにならず、グループ内で議論することが大切
4 危険なダイブには点数を入力してから手を挙げること(Dangerボタンが無いため)
5 「全体の印象」で7つのカテゴリを判断し、点数を決定すること

【2日目】
1 (初日を終え)全体的に良いジャッジができていると感じているが、点数が集まり過ぎているように感じる。7人のジャッジがいるのだから、いい演技とそうでない演技にはしっかりと差をつけるべき高得点を出すことをためらわないこと
2 シンクロの点数が抑え気味ではないか? 質の良い演技で同調性が高い演技には8~9点の採点を7点程度で終わらせないこと
3 ジャッジはラウンドごとのランキングボードを見ないように!

【3日目】
1 距離が遠い演技には減点をすること
2 205B や305Bで、膝を曲げて宙返りをかける動作や横に飛んでいる 演技にもしっかりと減点をすること
3 逆立ちは、開始の姿勢(倒立姿勢)が不十分なものは0.52点の減点
4 6243Bなど、台の中に入っている演技にも減点をすべき
5 逆立ちジャッジは足だけでなく、手が動いたかどうかもしっかりと見ること
6 カテゴリを瞬時に見極めること。5つの要素の中の1つだけを見て減点し過ぎないこと
7 年齢グループを考慮すること(ほとんどの日がAとBの予選・決勝を交互に行っていたため)

【4日目】
1 シンクロのExジャッジはもう一人の演技に採点を惑わされないこと
2 Satisfactoryの中にばかりいないこと。ジャッジの「安全地帯」と思わず、良い演技には良い点数を出す勇気を持つこと

【5日目】
※この日から新しいグループにシャッフル
1 再度、「点数」のあとに「カテゴリ」が決まるのではなく、「カテゴリ」を瞬時に判断し、その中の「点数」を決定すること、の議論が交わされた

【6日目】
1 減点ばかりを探すのではなく、良い部分もしっかりと見ること。違う失敗でも同じ点数になることがあるが、その理由が大切である

【7日目】
1 7人ジャッジがおり、3つの点数が残るが、その3つが同じになることが理想
2 試合では75%以上の採点が、1点以上離れているこれは問題である。毎朝グループで動画を見て協議し、意見をまとめているのはこの差が出ないようにしているからである

【8日目】
本大会を通じての意見、感想をグループ内で一人ずつ発表。グループの代表が全体に発表した

【まとめ】
 時差、治安、アウトドアプール、自身初の国際ジャッジなど、様々な不安があり参加した本大会であったが、毎日が充実した内容で無事終了することができた。

 刻々と変化する気温、風、タイムスケジュールなど、 選手・コーチは過酷な環境下の中で最善を尽くしてくれた。当然ながらジャッジもその影響を受けつつも、ジュニア世界最高峰の大会 に答えるべく毎日、熱心に議論 を繰り返した。

 今回はオリンピックでのジャッジ経験者から、私のように初めての国際ジャッジも多数おり、 毎朝のミーティングやTDCからの情報発信は非常に有意義なものとなった。 国内大会でもこのようにジャッジングに対する議論が活発になれば、最終的に日本の競技力向上にも還元できると感じた。

 また、日本の競技運営は世界に誇れるものであることを実感し、今後は積極的に国際大会を誘致すれば、「する、見る、支える」のすべてが網羅できるのではないだろうか。今回、このような機会を与えてくださった (公財)日本水泳連盟をはじめ、関係各位に感謝したい。

月刊水泳 vol.582 2025年1月号掲載